ヒアカムズシンジサン
小野伸二がJリーグに帰ってきた。今季より清水エスパルスでプレーしており、現在リーグ2位と好調のチームで、見事な活躍を見せている。今後小野がさらにチームにフィットすることになれば、エスパルスはひょっとしてひょっとするかもしれない…。

新チーム合流後、小野は練習中に若手選手から「シンジさん」と呼ばれることに苦言を呈し「ピッチではシンジでいい」と伝えたという。付き合うことになったばかりの、それも結構ノリノリなカップルのセリフのようだが、一瞬の判断の遅れで局面がガラリと変わるサッカーにおいて、呼び名の「さん」を省略するのは割と普通のことなのだそうだ。
それでもやはり若手選手はどうしても「シンジさん」と呼んでしまうのだという。当然だろう。何せ相手は世界の小野伸二である。少年時代より類まれなるテクニックで天才の名をほしいままにし、浦和レッズにて衝撃的プロデビュー、2戦目にしてプロ初得点。各年代別で代表選手に選出され、若干18歳でW杯出場、ファーストタッチで股抜き。そして長きに渡るオランダリーグでの活躍、かの地で「ベルベット・パス」と名付けられた両足から繰り出される柔らかで高質なパス、数々の芸術的なゴール、ロッテルダムの太陽、チャンピオンズリーグへの出場、UEFAカップへの出場(そして優勝!)、怪我の多さ故に実現はしなかったが数多の欧州巨大クラブが本気で欲しがった男、こうした強烈な実績を前にして、「シンジ走れ」だの「シンジ、よこせ」だのと言い放つことは、なかなか出来たものではない。若手選手は呼び捨てにしなければならないことが重荷となり、そのストレスでプレーに集中することなどできないはずなのだ。内気な選手の中には、意を決して「シンジ」と呼んだ直後に、まるでお笑い芸人のように、顔を歪ませ「さん!」と叫ぶ者だっていそうである。あるいは小野には全く聞こえないような小さな声で「シンジ」と呼ぶ者や、ヤケクソになっていっそ名前を呼ぶまいと決意し、プレイ中に小野との一切の関わりを持たないことになる選手もいるかもしれない。

「シンジサン」は5字。「シンジ」に「サン」という2字をプラスしただけだ。この2字を発声している間に一体なにが起こるというのだろう。局面を変えてしまうようなロスになるとはとても思えない。どうしても問題があるということなら、完全なる余計なお世話だが、「オノサン」か「シンサン」がベストであると考える。特に後者は、2つの撥音がリズミカルで実に言いやすいではないか。

今季の清水エスパルスにとって、小さいようでいて大きいようでいて、やはり小さい問題である。
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by sporting_emoto | 2010-04-21 22:37 | Football
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